廃止措置のための格納容器・建屋等信頼性維持と廃棄物処理・処分に関する基盤研究及び中核人材育成プログラム

東北大学

プロジェクト

鋼構造物腐食・防食

概要

研究対象となる主な鋼製構造物

研究対象となる主な鋼製構造物
(IRID公開資料(2013年)」より)

福島第一原子力発電所の廃止措置を着実かつ安全に進めるためには、構造強度を確保するとともに、核燃料の冷却と放射性物質の閉じ込め機能を必要な期間に亘って確実に維持することが必要です。大規模な余震が起こった場合にもこれらの機能が失われないために適切な尤度を見込んでおくことも必要であり、原子炉格納容器や冷却材配管系の合理的な保全が要点となります。核燃料の冷却と放射線の遮蔽を維持するために水の利用が不可欠ですが、それは、金属製の機器・構造物が長期に亘って水環境と共存せねばならないことを意味します。通常の状態の原子力発電所で用いられている水は高度に管理された極めて純度の高い水ですが、事故後の福島第一原子力発電所は、設計の想定から逸脱した環境となっています。このような状況で、構造材料の最大の経年的劣化要因は腐食であると考えられます。

鋼構造物腐食・防食タスクグループ(TG(1)-1)では、原子炉格納容器や冷却水配管などの鋼製構造物を主対象として、腐食による劣化の予測と評価の方法、そして劣化抑制技術の開発のための研究を行っています。TG(1)-1には、東北大学の量子エネルギー工学と材料工学の分野から教員と大学院生、そして、福島大学と福島工業高等専門学校の教員が参加しています。

トピック

TG(1)-1では、「原理・原則に基づいた腐食問題への対応技術」を研究し、それを通じて「現場での課題を適切にブレークダウンして研究テーマ化し、成果を現場にフィードバックできる人材」の育成に努めています。

研究課題の特徴の一つは、環境条件が独特かつ多様であることです。主要な影響因子は、温度、Cl-濃度、pH、酸化剤濃度(電位)、イオン種と濃度、流速、放射線、劣化塗膜の影響など多岐にわたります。腐食の予測と評価においてまず枢要なことは、腐食モードの判定です。つまり、均一腐食が生じるのか、あるいは局部腐食を想定すべきなのかという判断です。この両者で対応の基本的考え方が異なるからです。均一腐食では進展速度を管理・抑制すること、局部腐食では腐食停止条件を明確にしてその条件以下に維持すること、が基本的な考え方になります。福島第一原子力発電所では、再臨界防止の観点から、ホウ酸あるいは五ホウ酸ナトリウムの水溶液が炉内に注入される可能性があり、これは腐食モード(局部/均一)を変化させる要因となる可能性があります。

いずれの腐食モードにしても、環境中の酸化剤(カソード反応)を極力減らすことが有効な対策となります。現在、現場では窒素ガスによる脱気を常時継続し、溶存酸素濃度を低減することでカソード反応の抑制に努めています。放射線環境下ならびに流動下において、実効的なカソード反応速度(腐食速度)が増していると思われ、その評価が重要です。また、デブリ取り出しの際に格納容器の蓋を開放すれば、溶存酸素濃度(腐食速度)が一時的に上昇する可能性があります。その影響を予め評価しておく必要があります。

今後、長期的な腐食対策技術の有力な選択肢として、腐食抑制剤の利用が考えられます。重要な点は、放射線を含む複雑多様な環境条件下で効果を発揮することに加えて、有害な副次的効果を持たないことです。広範なアイデアと的確な評価が必要とされます。

TG(1)-1では、このような観点から、腐食の的確な予測と軽減技術策定のための研究を行っています。参加している学生諸君は、電気化学、材料工学を始めとする基礎学理を身につけた上で実験的あるいは計算科学的なアプローチで課題に取り組んでいます。

スタッフ

  • 原 信義 教授
    原 信義 教授
  • 武藤 泉 教授
    武藤 泉 教授
  • 菅原 優 助教
    菅原 優 助教
  • 渡辺 豊 教授
    渡辺 豊 教授
  • 阿部 博志 助教
    阿部 博志 助教
  • 長谷川 晃 教授
    長谷川 晃 教授
  • 青木 孝行 特任教授
    青木 孝行 特任教授